WATER, IRON & TIME

水と鉄が、風景になった。

製鉄を支えるために生まれた水辺。
1927年から2027年へ、河内の歩みをたどります。

山々に囲まれた河内貯水池の静かな水面
風景に残る、水と産業の歴史。

WHY WATER?

製鉄に必要だった、水。

八幡製鐵所の拡張に伴い、将来にわたって工業用水を安定して確保するためにつくられた河内貯水池。工事は1919年5月に始まり、1927年に完成しました。

設計・施工を総指揮したのは、製鐵所の土木技術者・沼田尚徳。機能だけでなく、山あいの風景に調和する意匠にも、その仕事が表れています。

河内貯水池堰堤の外観
製鉄を支えてきた、石張りの堰堤。

PEOPLE & IDEAS

技術者として、
文化人として。

THE ENGINEER

沼田尚徳

八幡製鐵所の土木技術者

1900年卒
京都帝國大学
土木工学科第一期生
1915–1916年
約9か月間、英米を視察
文化人として
漢詩や書に親しみ、
「召水」と号した

工事を率いた沼田尚徳は、新しい技術を学ぶことに熱心な一方、漢詩や書を愛した人物でした。貯水池の着工前には英米を訪ね、各地の事例を見学し、文献を集めています。

石の形、橋の曲線、周囲の山との調和。目に映る意匠を、それをつくった人の仕事と重ねて眺めてみませんか。

工事の歳月
8年
工事に携わった人数
延べ90万人

工事期間・人員は、土木学会の資料(HANDS 082)の記述によります。

河内貯水池堰堤の表面に規則的に積まれた切石
積み重ねた切石が、堰堤の表情をつくる。
河川一等兵/2008年撮影/パブリックドメイン。石張り部分を拡大。

MATERIALS & CRAFT

石の表情の奥に、
構造の工夫。

石造りに見える堰堤ですが、構造はコンクリートを使った重力式ダムです。表面を覆う地元・北河内産の切石は、施工時に型枠の役割も担っていました。

水を支える構造
コンクリートの堤体
風景に見える表情
地元の切石を積んだ表面

一つひとつの石と、堰堤全体の曲線。近くの質感と遠くからの輪郭、その両方に目を向けてみてください。

堰堤の見どころを詳しく

1919 — 2027

水とともに、
重ねた時間。

  1. 貯水池の工事が始まる

    5月、官営八幡製鐵所の用水確保に向けて着工。

  2. 南河内橋が完成

    11月、独特なレンズ形のトラス橋が竣工。

  3. 河内貯水池が完成

    約8年の工事を経て、貯水池が完成。

  4. 土木遺産として評価される

    堰堤と南河内橋が、2000年度の土木学会選奨土木遺産に。

  5. 南河内橋が重要文化財に

    12月19日、国の重要文化財に指定。

  6. 貯水池完成から100年

    水辺の風景と、その背景にある仕事を次の時代へ。

BEYOND THE RED BRIDGE

橋ごとに、
違うつくりがある。

南河内橋のほかにも、河内には特色のある橋がつくられました。土木学会の資料から、三つの橋の構造を紹介します。

資料では、水無第一橋・第二橋は撤去済みとされています。現在の通行範囲や見学条件は、現地の案内を優先してください。

訪問前のご案内を見る
中河内橋
石造アーチの橋。石の組み方に加え、アーチ下面の煉瓦にも特徴があります。
北河内橋
アーチ形の鉄梁とコンクリートの床板を組み合わせた橋。鋼材を生かしたつくりです。
猿渡橋
切石を積み上げた石造アーチ橋。同じ河内でも、素材や構造の使い方は一様ではありません。

LANDSCAPE & LIFE

この水面の前にも、
暮らしがあった。

土木学会の解説には、貯水池の建設によって、民家や棚田のあった山あいの風景が水面の下になったことが記されています。

産業を支えた技術の歴史と、地域の暮らしの変化。その両方を知ることで、いま目の前にある静かな水辺を、少し違うまなざしで見つめられます。

OPEN THE ARCHIVE

建設当時の写真と、
図面をひらく。

土木学会の資料には、建設中の堰堤、南河内橋の設計図、青年期の沼田尚徳の写真がまとめられています。完成した風景と見比べて、建設の過程をもう一歩たどれます。

土木学会 · HANDS 082
PDF/1ページ

河内貯水池堰堤・
周辺橋梁群

写真と図面の資料を読む(PDF)

資料は発行時点の記録です。交通・施設の利用条件は、現在の案内をご確認ください。